ブラック・ショールズの公式の解説

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   目次

 1. はじめに
 2. オプション
 3. ブラック・ショールズの公式
   3.1. ブラック・ショールズの公式の定義
   3.2. ブラック・ショールズの公式の利用例
   3.3. ブラック・ショールズの公式の問題点
 4. 公式中の各変数がオプション価格に与える影響
   4.1. ヨーロピアン・コールオプションの場合
   4.2. ヨーロピアン・プットオプションの場合
 5. オプションのリスク指標
 6. 参考文献



1.はじめに

オプション価格の決定に用いられるブラック・ショールズの公式について、公式中の各変数がオプション価格に与える影響を分析する。



2.オプション

オプションとは、何かをする「権利」のことである。 基本型としては、コール・オプションとプット・オプションの2つのタイプがある。 前者は’ある決められた日’に(までに)’ある決められた価格’で原資産を購入する「権利」であり、後者は’ある決められた日’に(までに)’ある決められた価格’で原資産を売却する「権利」である。 ここで、’決められた日’を満期日、権利行使日、あるいは消滅日といい、'決められた価格'を行使価格という。 オプション価格をオプション・プレミアムという。 権利行使がいつ出来るかによって、ヨーロピアン・オプションとアメリカン・オプションに分かれる。 前者は満期日にのみ権利行使が可能であり、後者はオプションの存続期間中いつでも行使可能である。 オプションは純粋に権利である為、これを行使しなければならない義務は無い。

原資産:株式、債券、通貨等の現物商品のこと。派生商品(デリバティブ)とは、原資産の価格または指数に依存して価値が決定されるものであり、オプションはこれに該当する。



3.ブラック・ショールズの公式

3.1.ブラック・ショールズの公式の定義

ヨーロピアン・コールオプション及びヨーロピアン・プットオプションのプレミアムは、以下のブラック・ショールズの公式で決定される。

*リスクフリーレート(r)の計算方法

リスクフリーレートの計算には、満期までの期間に対応する短期金利を用いる。 一般的には短期金利として、日経新聞に掲載されている短期金融市場の無担保コールを用いる。 仮に満期までの期間が3ヶ月で、短期金融市場の無担保コール3ヶ月物が0.20%だとすると、リスクフリーレートはr=ln(1+0.0020)=0.001998と計算される。 この計算方法がどのように導出されたか、以下に説明する。
ブラック・ショールズ・モデルでは、原資産の価格変動過程が極めて短い間隔で連続的に発生すると仮定されているため、金利に関しても連続複利方式で定義されている。 元金がW、利子率がrで、年に2回利子が払われたとすると、W → 半年後(1+r/2)W → 一年後(1+r/2)2Wとなる。 年n回利子が払われたとすると1年後の金額は、W → 一年後(1+r/n)nW 。 nを∞にし、h=n/rとおくと、
したがって、W → 一年後erW。 仮に年1回の複利方式の金利をR、連続複利方式の金利をrとすると、W投資した場合の一年後の投資元本は、Rの場合(1+R)W、rの場合erW。 両方の投資資本を一年後に一致させると、(1+R)W=erWより、r=ln(1+R)となる。

*ボラティリティ(σ)の計算方法

市場でよく使われるボラティリティには、次の2つがある。

 *ヒストリカル・ボラティリティ
  過去一定期間の原資産の市場価格の騰落率の標準偏差。
 *インプライド・ボラティリティ
  ブラック・ショールズの公式により、オプションの市場価格から逆算した値。

インプライド・ボラティリティは、現在の市場が将来の変動を予想した結果である。 したがって、過去どんなに変動していても、これからは今まで程は変動しないであろうと市場関係者の多くが予想すればインプライド・ボラティリティは低下し、その結果オプションのプレミアムも低下する。 ただし、取引量の少ないオプションのインプライド・ボラティリティは信頼性が低い場合が多いため、代わりにヒストリカル・ボラティリティを用いる。
日経平均のヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティは日経新聞に掲載されているが、それ以外の銘柄は現在のプレミアムからインプライド・ボラティリティを逆算するしかない。


3.2.ブラック・ショールズの公式の利用例


3.3.ブラック・ショールズの公式の問題点

*原資産の市場価格の変動の確率分布に、標準正規分布を用いていること。

原資産が株価や金利や為替レート等、マイナス値になり得ない場合でも、マイナス値に変動する確率が生じてしまう。 この場合、対数正規分布に従うと仮定するのが一般的である。 標準正規分布では、1ドル100円の為替レートが200円になる確率と0円になる確率が等しいと考えるのに対して、対数正規分布では、1ドル100円の為替レートが200円になる確率と50円になる確率が等しいと考えることになる。

*ボラティリティが常に一定値であると仮定していること。

利子率にタームストラクチャがあるように、ボラティリティにもタームストラクチャがある。

*エキゾチック・オプションに対応していないこと。

エキゾチック・オプションとは、通常のプットやコールから進化した高度なタイプのオプション商品の総称。 エキゾチックを「風変わりな」というような意味で用いている。 行使条件が原資産レート以外だったり、付帯条件がついたり、また行使して得られる利益が複雑な式で定義されたりと、大まかに分類しても数十のタイプが開発されている。 エキゾチック・オプションの典型的なタイプの一つに、ノックアウト・オプションがある。 ノックアウト・オプションには、アウト行使レートと呼ばれる特別な為替レートに一度でも達すると、権利が消滅するという条件がついている。



4.公式中の各変数がオプション価格に与える影響

ブラック・ショールズの公式では、オプション価格の形成に5つの変数が関係している。 これらの変数の変化がオプション価格にどのような影響を与えるかを分析する。 この分析により、各変数の変化がオプション価格に与える影響を知ることができ、それぞれの変数が変化した時に瞬時にオプション価格の変化の方向が予測できるようになる。 他の変数を固定して1つの変数の変化の影響を分析するため、まず各変数の基準値を以下の様に定める。

S (原資産の市場価格) = 100
X (権利行使価格) = 100
r (リスクフリーレート) = 0.03
T-t (満期までの期間) = 1
σ (ボラティリティ) = 0.2

オプションとしてヨーロピアン・コールオプションを想定した時は、以下のようになる。

S(原資産の市場価格)の変化の影響 : S(原資産の市場価格)が上昇していくに従って、コール価格は上昇する。 特に権利行使価格前後では、指数的に上昇する。

X(権利行使価格)の変化の影響 : X(権利行使価格)が上昇していくに従って、コール価格は下落する。 特に原資産の市場価格前後では、指数的に下落する。

r(リスクフリーレート)の変化の影響 : r(リスクフリーレート)が上昇していくに従って、コール価格は線形的に上昇する。 これは、金利が上昇するほど満期の株の価値が高まるからである。

T-t(満期までの期間)の変化の影響 : T-t(満期までの期間)が長くなるに従って、コール価格は上昇する。 これは、満期までの期間が長いほど不確実性が高まり、かつ権利行使価格の現在価値が金利分減少するためである。 上昇の仕方は期間が長くなると、徐々に限界コール価値上昇力が逓減している。

σ(ボラティリティ)の変化の影響 : σ(ボラティリティ)が上昇していくに従って、コール価格は線形的に上昇する。 これは、ボラティリティが大きいほど不確実性が高まるからである。


4.1.ヨーロピアン・コールオプションの場合


4.2.ヨーロピアン・プットオプションの場合



5.オプションのリスク指標

オプションのリスク指標を説明する前に、以下の用語を説明する。

*イン・ザ・マネー(ITM)

オプションが本源的価値を有する状態の事。 コール・オプションの場合には、権利行使価格が現在の市場価格を下回る状態であり、プット・オプションの場合は、権利行使価格が現在の市場価格を上回る状態を言う。 アメリカン・オプション場合はこのイン・ザ・マネーの状態であればすぐに行使して、本源的価値の分を利益としてを得ることができるが、権利行使期間が残っている場合には、その間にさらに利益が増加する可能性がある。 すなわち時間的価値を持つので、通常は行使するよりもオプションの権利を売り戻して、本源的価値と時間的価値の合計の対価を得るほうが有利になる。

*アウト・オブ・ザ・マネー(OTM)

オプションが本源的価値を有してない状態の事。 コール・オプションの場合には、権利行使価格が現在の市場価格を上回る状態であり、プット・オプションの場合は、権利行使価格が現在の市場価格を下回る状態を言う。 アウト・オブ・ザ・マネーの状態ではオプションを行使しても利益を得ることは出来ない。 ただ、現時点で本源的価値を有していなくても、その後の市場価格変動により利益が発生する状態になる可能性がある。

*アット・ザ・マネー(ATM)

オプションの権利行使価格が現在の市場価格と等しい状態の事。 イン・ザ・マネーとアウト・オブ・ザ・マネーのちょうど境目の状態を言う。 本源的価値は無いが、時間的価値はもっとも高い状態である。

それでは、オプションのリスク指標を説明する。

*デルタ δ=∂f/∂S ( 近似すると δcall=N(d1)>0 , δput=-N(-d1)<0 )

原資産の市場価格の変化に対するオプション価格の変化率。 通常、原資産の市場価格1円上昇に対するオプション価格の変化であらわされる。 例えば、デルタ値0.40のオプションは原資産の市場価格が1円上昇すると、そのオプション価格が約0.40円増加する。 コール・オプションのデルタ値は常に正の値をとり、プット・オプションのデルタ値は常に負の値をとる。 デルタの値は、OTMの状態では0に近づき、ITMの状態では±1に近づく。

*ガンマ γ=∂2f/∂S2 ( γcall>0 , γput>0 )

原資産の市場価格の変化に対するデルタの変化率。 通常、原資産の市場価格1円上昇に対するデルタの変化であらわされる。 例えば、ガンマ値0.002のオプションは原資産の市場価格が1円上昇すると、デルタ値が約0.002増加する。 ガンマ値は直接分からなくても、デルタ値の変化を観察することで、ガンマの影響を把握することができる。 ガンマの値は、ITM,OTMの状態では小さくなり、ATMの状態では大きくなる。

*セータ θ=∂f/∂(T-t) ( -θcall<0 , -θput<0 )

満期までの期間の変化に対するオプション価格の変化率。 通常、1日の単位時間減少に対するオプション価格減少分(増加することはない)であらわされる。 セータの値は、ITM,OTMの状態では小さくなり、ATMの状態では大きくなる。 特にATMの時は、満期までの期間が短くなるにつれて加速度的に大きくなる。

*べガ V=∂f/∂σ ( Vcall>0 , Vput>0 )

ボラティリティの変化に対するオプション価格の変化率。 通常、ボラティリティ1%上昇に対するオプション価格の変化であらわされる。 べガの値は、ITM,OTMの状態では小さくなり、ATMの状態では大きくなる。

*ロー ρ=∂f/∂r ( ρcall>0 , ρput<0 )

リスクフリーレートの変化に対するオプション価格の変化率。 通常、金利1%上昇に対するオプション価格の変化であらわされる。 ブラック・ショールズの公式の5つの変数の中では、比較的金利の与える影響は低く、特に残存期間の短いオプションではあまり考慮されない指標である。



6.参考文献

[1] 石村貞夫+石村園子,"金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式",東京図書,1999
[2] http://www.nomura.co.jp/terms/a-gyo/opusyon.html
[3] http://www.geocities.co.jp/WallStreet/1904/keizaigaku-list.htm
[4] http://www.sigmabase.co.jp/publish/body/4-916106-39-3-2.htm
[5] http://www.options.gr.jp/terms/terms.html
[6] http://www.sfc.keio.ac.jp/\%7Es97724mn/99akifinal1.htm
[7] http://www.options.gr.jp/saru/index.html

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